Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうせつ えんちょう
小説 圓朝
正岡 容
Lesen Sie 小説 圓朝 (しょうせつ えんちょう) von 正岡 容 (まさおかいるる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 163.270 Zeichen · 325 Bildschirme
ほんとうに次郎吉にとっては、桐庵先生の皺枯れ声のひとつひとつが天来の「声」と聴けた、世にも有難い神々の御託宣とおもわれた。夢に夢見るとはこれこのことだろう、思いもかけない喜びに、身体中の隅々までがいっぺんにパーッと明るくなってくるような思いがしたのだった。
やがてすっかりあきらめつくしたもののように、やや青ざめた顔を横に振った兄玄正が、
「有難うございました先生」
低い力の無い声で礼をいうと、今度は病人の方へ向き直って、
「次郎吉」
のしかかるように顔の上から、
「オイ、いのちには代えられぬ。阿母さまも承服して下さるじゃろう。お前明日から元の小圓太になれ。その代り、末始終、芸の勉強だけを忘れまいぞ」
負け惜みのようにいつもよりまたいっそう恐しい顔をしていった。
「……」
とたんにまたいよいよ深くスッポリと小圓太は掻巻で顔を隠した。あまりの事の嬉しさに、かえってきまりが悪いような気がしてきてますますまっとうにみんなの顔なんか、見てはいられない心持だからだった。僅かにそのかぶってしまった薄汚れた掻巻が、そのとき合点々々するように縦に二つ動いた。とおもったら今度はその掻巻が小止みなしに小刻みに慄えはじめた。