Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.234 Zeichen · 160 Bildschirme
彼は母が自分の腕に字を書いたことはよく覚えているけれども、母にどんなことを云われたかは覚えがなく、事に依ると、母は黙ってそれらのことをしていたようにも思えるのであった。
母が文字を書いてしまうと、
「若様」
と、いつからか傍に来ていた讃岐が云った。
「あのお方にお母さまの此のお歌を見せてお上げなさいませ。いゝえ、まだきっとその辺においでになります。さっきの所へ早くいらしって御覧遊ばせ」
彼がそう云われて、西の対屋へ戻って来ると、果してあの男が簀子のところに待ち構えていて、
「おゝ、何か御返事があったでしょうか。―――おゝおゝ、賢い/\」
と、跳び着くように寄って来て、わく/\した口調で云った。
滋幹は後に、その時の自分が母と平中との間に恋の取次をしたのであること、自分は平中に利用されたのであったこと、等を知ったのであるが、少くとも当時、母の側近に仕えていた女房たちと讃岐だけは、そのことを知っていたのであろうし、ひょっとしたら、讃岐こそ平中の同情者であって、母との間の連絡に滋幹を利用することを平中に教えたのも、彼女であったかも知れない。なぜなら、それもはっきりとは覚えていないのだけれども、滋幹が又あの屏風のある部屋へ連れ込まれて、母の筆の跡を平中に示した時、たしかその場に讃岐が居合わせたのみならず、これを消すのは勿体のう