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Japanische Klassiker mit Furigana

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しょうしょうしげもとのはは

少将滋幹の母

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.234 Zeichen · 160 Bildschirme

Aozora Bunko

たま/\部屋の前を通り過ぎる時、耳をすまして中の様子を窺っても、生きているのか死んでいるのか、コトリとの音も聞えなかったが、恐らく此の間のように、母の衣裳の数々を取り出して、そのなまめかしいかおりの中に埋まっているのであろうと、滋幹は推した。

そのゝち、その同じ年であったか、明くる年であったか、晴れた秋の日の爽やかな午過ぎに、父が珍しくも前栽に出て、萩がたわゝに咲いている遣り水のほとりに、ぼんやりと石に腰かけていたことがあった。滋幹はその時ほんとうに久振に父を見かけたのであったが、そうして石に憩うている父の恰好には、長い道中を歩いて来て、くたびれ切って道ばたに休んでいる旅人のようなところがあった。衣服などもひどく垢づいて、よれ/\になっていて、袂や裾が綻びたりちぎれたりしていたのは、もうその時分、身の周りの世話をする女房などがいなくなっていたのか、いてもそう云う女たちに手を触れさせることを厭ったのであろう。滋幹は、少しく傾きかけた日があか/\と父の半身を照らして、痩せ衰えた頬がつやゝかにかゞやいているのを見ながら、それでも敢て近寄ろうとはせず、五六歩離れて彳んでいると、父が小声で何かぶつ/\呟いているのが聞えた。