Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.234 Zeichen · 160 Bildschirme
かの中間僧が、主の上人に粥を観じて見せよと云われて観念を凝らした時、粥が化して白い虫の集団になったと云うのはその意味であって、真に不浄観を成就すればそう云う奇蹟を行うことさえ出来るのである。
さて、少将滋幹の日記に依れば、彼の父翁の老大納言も亦、不浄観を行じようとしたのであって、而も老大納言の場合は、かの失われた鶴、―――声を碧雲の外に断ち、影を明月の中に沈めた佳人の艶姿が、いつ迄も眼底を去りやらず、断腸の思いに堪えられないまゝに、その幻に打ち克とうとして一念発起するに至ったことは明かであって、その夜の父は滋幹を相手に、まず不浄観の説明から始めて、自分は何とかして自分に背いた人への恨みと、恋慕の情とを忘れてしまいたい、心の奥に映っているかの人の美貌を払拭して、煩悩を断ち切ってしまいたい、自分の行為は狂的に見えるかも知れないけれども、自分は今、その修行をしているのである、と、そう語ったのであった。
「そんならお父さまは、あゝ云うものを見にいらっしゃるのは今夜が始めてゞはないんですね」
父の長話が一段落へ来た時に滋幹が尋ねると、父はいかにもそうだと云うように頷いて見せた。