Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

しょうしょうしげもとのはは

少将滋幹の母

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.234 Zeichen · 160 Bildschirme

Aozora Bunko

然るに、それから四十年の星霜を経、さま/″\な移り変りの末に世捨て人となって佛に仕えている現在の母は、どんな風になっているであろうか。滋幹の記憶する母は、二十一二歳の髪の長い頬の豊かな貴婦人であるのに、西坂本の庵室に隠栖する尼僧の母は、すでに六十歳を越した老媼であることを思う時、滋幹の心は自然冷めたい現実の前に出ることを尻込みしなかったであろうか。彼にして見れば、永久に昔の面影を抱きしめて、あの時に聞いたやさしい声音や、甘い薫物の香や、腕の上を撫でゝ行った筆の穂先の感触や、そう云うさま/″\な回想をなつかしみつゝ生きて行く方が、なまじ幻滅の苦杯を嘗めさせられるより、遥かに望ましいことのように思えたでもあろうか。滋幹自身は格別そう云う告白をしている訳ではないが、母が尼となってから後、なお数年の歳月が空しく過ぎたのには、多分以上のような事情があったのではなかろうかと、筆者は推測するのである。

出家した滋幹の母が住んでいた西坂本、即ち今の京都市左京区一乗寺のあたりに敦忠の山荘があったことは、拾遺集巻八雑上の部伊勢の歌に、「権中納言敦忠が西坂本の山庄の滝の岩にかきつけ侍りける」