Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.234 Zeichen · 160 Bildschirme
此の人たちの好奇心に充ちた視線が、期せずして屏風に囲まれた御簾の方に注がれていた時、屏風の向う側ではどんなことが起りつゝあったか。―――時平は国経が袂の端を彼に渡して彼方へ逃げて行ったのを知ると、無言でその袂を自分の方へしずかに引いた。そして、今しがた国経がしていた通りに、御簾の隙間へ半身を入れて、うしろから此の大輪の花の如きものを抱きかゝえた。と、さっき屏風の彼方で嗅いた、あの甘いほのかな薫りが今はしたゝか咽せ返るように鼻を撲つのであった。女はその時までなお扇をかざしていたが、
「憚りながら、もうわたくしのものにおなりになったのですよ。お顔をお見せになって下さい」
と、そう云って時平がそっと袂の上から手をとらえると、手はわな/\とふるえながら扇を膝のあたりへ置いた。御簾の間には燈火がないので、うたげの席にともっている大殿油の穂先が、屏風に遮られながら遠く此方側へまたゝきを送っているのであるが、そのうすら明りの中に匂うほのじろいものが始めて接するその人の面輪であることが分ると、時平は自分の計畫がいみじくも此処まで運んだことに云いようのない満足をおぼえた。