Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 83.234 Zeichen · 160 Bildschirme
「御車、御車」
と云いながら、自分が先に階を下りると、車の簾を両手で高くかゝげ持った。時平が重くて美しい肩の荷物を持て扱いながら、喘ぎ/\車の際まで辿り着くと、雑色や舎人たちが手に/\かざす松明の火のゆらめく中で定国や菅根やその他の人々が力を添え、両側から掬い上げるようにして辛うじてその嵩張るものを車へ入れた。国経は簾をおろす時に、
「私をお忘れにならないで」
と、一と言云ったが、生憎なことに車の中は真っ暗で、もうその人の顔は見えず、せめて別れの言葉ぐらい聞かしてくれるかと思っているうちに、あとから乗り込んだ時平の姿で、眼の前が一杯に塞がれてしまった。
その時、―――と云うのは、北の方のあとに続いて時平が車に乗った時、下襲の尻が簾から食み出して地に垂れたのを、誰か混雑に紛れつゝ寄って来て、手に取り上げて、簾の中へ押し入れてやった者があったが、それが平中であったのに気づいた人は殆どなかった。その夜平中は席にいたゝまれない心持で暫く席を外していたのであったが、昔の恋人が時平に拉し去られるのを見ては怺えきれなくなったのであろう。あり合う陸奥紙に、
物をこそいはねの松の岩つゝじ