Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうねんとうみ
少年と海
加能 作次郎
Lesen Sie 少年と海 (しょうねんとうみ) von 加能 作次郎 (かのうさくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.808 Zeichen · 10 Bildschirme
何を思う余裕もなく、為吉は刻一刻に荒れて来そうに思われる海の上を見つめていました。自分が今どんなところにいるかということも忘れてしまっていました。
じっと耳をすましていると、どこかに助けを呼び求めている声が空耳に聞えて来るのでした。幾人も幾人も、細い悲しげな声を合せて、呼んでいるように為吉の耳に聞えました。何だか聞き覚えのある声のようにも思われました。一カ月前に難船して死んだ村の人達の声のような気もしました。為吉は身をすくめました。糸を引くような細い声は、絶えたかと思うと、また続きました。その声はどこか海の底か、空中かから来るような気がしました。為吉は一心になって耳をすましました。
いつの間にか入江の口にも波が立って来ました。自分の乗っている船腹に打ちつける潮のぴたぴたする音が高くなって、舟は絶えず、小さな動揺を続けました。
突然、恰もこれから攻めよせて来る海の大動乱を知らせる先触れのよう、一きわ、きわだった大きな波が、二三畝どこからともなく起って、入江の口へ押しよせました。それが次第に近寄って、むくむくと大蛇が横に這うように舟の舳へ寄って来たかと思うと、舳を並べていた小舟は一斉に首をもたげて波の上に乗りました。