Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうねん
少年
Lesen Sie 少年 (しょうねん) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.225 Zeichen · 31 Bildschirme
同時に大沙漠の空想などは蜃気楼のように消滅した。今はただ泥だらけの荷車が一台、寂しい彼の心の中におのずから車輪をまわしている。……
保吉は未だにこの時受けた、大きい教訓を服膺している。三十年来考えて見ても、何一つ碌にわからないのはむしろ一生の幸福かも知れない。
三 死
これもその頃の話である。晩酌の膳に向った父は六兵衛の盞を手にしたまま、何かの拍子にこう云った。
「とうとうお目出度なったそうだな、ほら、あの槙町の二弦琴の師匠も。……」
ランプの光は鮮かに黒塗りの膳の上を照らしている。こう云う時の膳の上ほど、美しい色彩に溢れたものはない。保吉は未だに食物の色彩――脯だの焼海苔だの酢蠣だの辣薑だのの色彩を愛している。もっとも当時愛したのはそれほど品の好い色彩ではない。むしろ悪どい刺戟に富んだ、生なましい色彩ばかりである。彼はその晩も膳の前に、一掴みの海髪を枕にしためじの刺身を見守っていた。すると微醺を帯びた父は彼の芸術的感興をも物質的欲望と解釈したのであろう。象牙の箸をとり上げたと思うと、わざと彼の鼻の上へ醤油の匂のする刺身を出した。彼は勿論一口に食った。