Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうねん
少年
Lesen Sie 少年 (しょうねん) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.225 Zeichen · 31 Bildschirme
と太い腰を起した。保吉はそれでも頓着せずに帆前船の三角帆を直していた。が、硝子障子のあいた音にもう一度ふと目を挙げると、父はちょうど湯気の中に裸の背中を見せたまま、風呂場の向うへ出る所だった。父の髪はまだ白い訣ではない。腰も若いもののようにまっ直である。しかしそう云う後ろ姿はなぜか四歳の保吉の心にしみじみと寂しさを感じさせた。「お父さん」――一瞬間帆前船を忘れた彼は思わずそう呼びかけようとした。けれども二度目の硝子戸の音は静かに父の姿を隠してしまった。あとにはただ湯の匂に満ちた薄明りの広がっているばかりである。
保吉はひっそりした据え風呂の中に茫然と大きい目を開いた。同時に従来不可解だった死と云うものを発見した。――死とはつまり父の姿の永久に消えてしまうことである!
四 海
保吉の海を知ったのは五歳か六歳の頃である。もっとも海とは云うものの、万里の大洋を知ったのではない。ただ大森の海岸に狭苦しい東京湾を知ったのである。しかし狭苦しい東京湾も当時の保吉には驚異だった。奈良朝の歌人は海に寄せる恋を「大船の香取の海に碇おろしいかなる人かもの思わざらん」