Japanische Klassiker mit Furigana
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さんがくじょうど
山岳浄土
中村 清太郎
Lesen Sie 山岳浄土 (さんがくじょうど) von 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.724 Zeichen · 10 Bildschirme
いまや白衣をぬいで浄光をはなつ山々、しずまりたもうかたを拝んで筆をとる。秩父おろしが枯葉をまいて、思いは首筋から遠く天外をかけめぐる。そこにまたしてもかずかずの、すぎし山間遍歴のあとがあらわれる。そしてなんたるしみじみしい景色だ。ゆったりした景色だ、清らかな景色だ。
ゆらい老人は、むかしを語るをこのむという、そうかも知れない、が、なんでもむかしのものはよく、いまのものはわるいなどとは、そこにたしかにぐちがあろう。しかも山のむかしを渇仰するのは、けっしてそんな亜流ではない。老人でもないわたしでさえ、むかしというほどでない二十何年の山を、そんなにもなつかしむのは、ひとつはそれほど山のおもむきがわるく変わってしまったからだ。そのころの山はまだいかにも山らしい山であった。いまは――山の大彫像は、いぜんとして厳乎天半を領している、しかしちかづいてみると、そこにもここにも人間の猪口才がみにくいものをふりまいて、その荘厳をよごしている。便利になったという、まことに。しかしさすが自然のにおいも一歩しりぞいている。ちかづいたつもりが、あるいはかえって遠ざかったのではないか。