Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎひげへんしゅうちょう
山羊髯編輯長
夢野 久作
Lesen Sie 山羊髯編輯長 (やぎひげへんしゅうちょう) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.441 Zeichen · 102 Bildschirme
「アノ編輯長は居られるでしょうか」
「編輯長チウト……津守(つもり)さんだすな」
「ええ。そうです。そのツモリ先生に一寸(ちょっと)お眼にかかりたいんですが……」
「何の用であすか」
「新聞記事の事ですが」
「……………………………」
小使は中々腰を上げない。苦り切った表情で又も一服詰めて悠々と鉄火鉢の中に突込んだ。吾輩は心細いのを通り越して腹が立って来た。コンナケチな新聞社にコンナ図々しい小使が居る。まさか社長が化けているのじゃあるまいに……と思いながら……。
するとそのうちに小使がヤットコサと腰を上げた。煙管を腹がけの丼(どんぶり)に落し込みながら、悠々と俺の前に立塞がって、真黒な右手をニューと差し出した。俺は面喰って後退(あとずさ)りした。
「何ですか……」
「名刺をば……出しなさい」
吾輩は街頭強盗(ホールドアップ)に出会った恰好で、恐る恐る名刺を渡した。「中央毎夕新聞編輯部羽束(はつか)友一」と印刷した最後の一枚を……。
小使は、この名刺をギューと握り込んだまま、吾輩の直ぐ横に在る真暗い、泥だらけの階段を上って行った。その一足毎(ごと)に、そこいら中がギシリギシリと鳴って、頭の上の天井の隙間からポロポロとホコリが落ちて来たのにはイヨイヨ驚いた。