Japanische Klassiker mit Furigana
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やぎひげへんしゅうちょう
山羊髯編輯長
夢野 久作
Lesen Sie 山羊髯編輯長 (やぎひげへんしゅうちょう) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 51.441 Zeichen · 102 Bildschirme
「……実は……その……」
と吾輩は眼を白黒した。来るんじゃなかったかな……と思った。元来、何しにここへ来たんだか吾輩自身にもわからないので、いわば好奇心に駆られて来たに過ぎない。とりあえずこれから用向きを考え出さなければならないのだが、コンナ婦人に改まられると、考えて来た用向きでも引込んでしまうのが吾々、男性の弱点である。
「只今。千代町の藤六爺(じい)から電話がまいりましたが……生憎(あいにく)途中で切れましたが……」
ああ助かったと吾輩は思った。チャンスチャンス……。
「……あの娘がどうか致しましたので……」
「ヘエ。実はその……此村……ヨリ子さんが……」
「どうしたんですか一体……」
急(せ)き込んだ夫人の語気が、だんだんお里をあらわして来た。吾輩は思い切って打明けた。
「実は……その自殺未遂で……」
「エッ。自殺……」
この時の夫人の驚きようの美くしかったこと……市川松蔦(しょうちょう)だって、こうは行くまい。細長い三日月眉(まゆ)の下で、大きな瞳をゆっくりとパチパチさした。唇を半分開いてワナワナと震わした。白い両手を胸の上でシッカリと握り合わしてヨロヨロと背後(うしろ)へよろめいた。