Japanische Klassiker mit Furigana
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あるおんなのしょうがい
嵐・ある女の生涯
島崎 藤村
Lesen Sie 嵐・ある女の生涯 (あるおんなのしょうがい) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 47.846 Zeichen · 96 Bildschirme
そこはおげんの伜が東京の方に持った家で、夏らしい二階座敷から隅田川の水も見えた。おげんが国からお新を連れてあの家を見に行った頃は、旦那はもう疾くにおげんの側に居なかった。家も捨て、妻も捨て、子も捨て、不義理のあるたけを後に残して行く時の旦那の道連には若い芸者が一人あったとも聞いたが、その音信不通の旦那の在所が何年か後に遠いところから知れて来て、僅かに手紙の往復があるようになったのも、丁度その頃だ。おげんが旦那を待ち暮す心はその頃になっても変らなかった。機会さえあらば、何処かの温泉地でなりと旦那を見、お新にも逢わせ、どうかして旦那の心をもう一度以前の妻子の方へ引きかへさせたい。その下心でおげんは東京の地を踏んだが、あの伜の家の二階で二人の弟の顔を見比べ、伜夫婦の顔を見比べた時は、おげんは空しく国へ引返すより外に仕方がないと思った。二番目の弟の口の悪いのも畢竟姉を思ってくれるからではあったろうが、しまいにはおげんの方でも耐えきれなくなって、「そう後家、後家と言って貰うまいぞや」と言い返して見せたのも、あの二階だ。そうしたら弟の言草は、「この婆サも、まだこれで色気がある」