Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅんさじしょく
巡査辞職
夢野 久作
Lesen Sie 巡査辞職 (じゅんさじしょく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.907 Zeichen · 63 Bildschirme
「イイエ。良う寝ておりました。ホホ。神林先生が起して下さいました」
「ウム。何か云うて行きはしなかったかね」
「アイ。云うて行きなさいました。巡査さんを呼んで来るから、お茶を沸かいておけと云って走って出て行きなさいました。それで……アノ……ホホホ……」
「何か可笑しい事があるかね」
「……アノ……その入口に引っかかって転んで行きなさいました……ホホホホホホ……」
「うむ。ほかには何とも、神林先生は云うて行かなかったかね」
マユミは美しい眼を、すこし上に向けて考えていたが、やがて大きく一つ点頭いた。
「アイ。云うて行きなさいました。アノ奥座敷へはドンナ事があっても、行く事はならんと云うて行きなさいました」
「それでマユミさんは奥座敷へ行かなかったのかね」
「アイ。まだ二人とも寝ていんなさいます」
「ウム。アンタは昨夜、良う睡ったかね」
「アイ。一番先に寝てしまいました。ホホホ……」
「ハハハ。そうかそうか。よしよし……」
台所に這入りかけていた草川巡査は、そういうマユミの無邪気な笑顔を見ているうちにフッと気が変った。何故ともなくスルリと身を引いて、タッタ一人で家の周囲をグルリと一廻り巡回してみたが、それはやはり職務のために緊張し易い警官特有の第六感の作用であったかも知れない。