Japanische Klassiker mit Furigana
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じゅんさじしょく
巡査辞職
夢野 久作
Lesen Sie 巡査辞職 (じゅんさじしょく) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 31.907 Zeichen · 63 Bildschirme
もちろんラジオだけは最初からの約束があるので、その当座の中は何とも云わなかったが、それでも何も知らない娘のマユミが珍らしさの余りに、一知が操っているラジオを覗きに行ったりするのが、オナリ婆さんの嫉妬をタマラなく刺戟したらしかった。いつも目敏くマユミを監視して、一知に聞えよがしに訓戒した。
……アノ一知は貧乏者の借金持ちの子で、お前とは身分が違うのを、お前のお守と、家の田畠の番人に雇うてあるのだよ。いわばこの家の奴隷で、尋常に雇うとお金を出さなければならないから、養子という事にしただけの人間だよ。だから、まだ籍も何も入れてない赤の他人で、一生懸命に働いて行くうちに、私達が死ねば、お礼にお前と、この家の財産を遣る口約束がしてあるだけの人間だよ。
……といったような言葉を日に増し手厳しく実行に移して来た。それは永年自分達夫婦が、金銭の奴隷として屈従しつくして来た不愉快さ、憂鬱さ、又は年老いてタヨリになる児を持ち得ない物淋しさ、情なさ、自烈度さを、たまらない嫉妬心と一緒に飽く事なく新しい犠牲……若い、美しい一知に吹っかけて、どこまで行っても張合いのない……同時に世間へ持出しても絶対に通用しない自分達の誇りを満足させ、気を晴らそうとしているに相違ないのであった。