Japanische Klassiker mit Furigana
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おぐらいけのはす
巨椋池の蓮
和辻 哲郎
Lesen Sie 巨椋池の蓮 (おぐらいけのはす) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.016 Zeichen · 12 Bildschirme
そういう白蓮に取り巻かれてみると、これまで白蓮という言葉から受けていた感じとはまるで違った感じが迫って来た。それは清浄な感じを与えるのではなく、むしろ気味の悪い、物すごい、不浄に近い感じを与えたのである。死の世界と言っていいような、寒気を催す気分がそこにあった。これに比べてみると、爪紅の蓮の花の白い部分は、純白ではなくして、心持ち紅の色がかかっているのであろう。それは紅色としては感じられないが、しかし白色に適度の柔らかみ、暖かみを加えているのであろう。われわれが白い蓮の花を思い浮かべるとき、そこに出てくるのはこういう白色の花弁であって、真に純白の花弁なのではあるまい。そう私は感ぜざるを得なかった。真に純白な蓮の花は決して美しくはない。艶めかしい紅蓮の群落から出て行ってこの白蓮の群落へ入って行ったためにそう感じたのであるとは私は考えない。真紅の紅蓮が艶めかし過ぎて閉口であるように、純粋の白蓮もまた冷たすぎ堅すぎておもしろくない。やはり白色に淡紅色のかかっているような普通の蓮の花が最も蓮の花らしいのである。
こうして蓮の花の群落めぐりをやっているうちにどれほどの時間がたったかは忘れたが、やがてだんだん明るさが増し、東の空が赤るんでくると、ついに東の山、西の山が見えるようになって来た。