Japanische Klassiker mit Furigana
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パリのうたうたい
巴里の唄うたい
岡本 かの子
Lesen Sie 巴里の唄うたい (パリのうたうたい) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.746 Zeichen · 8 Bildschirme
別に好い声という訳ではない。むしろ灰汁のある癖の多い声が向く、それに哀愁もいくらか交る。そしてもしその唄が時の巴里の物足りなく思っている感情の欠陥へこつりと嵌まり込めばたちまち巴里じゅうの口から口へ移されて三日目の晩にはもうアンピールあたりの一流の俗謡の唄い手がいろいろな替唄までこしらえて唄い流行らしてくれるし譜本は飛ぶように売れ始まる。
スウ・レ・トアド・パリの唄から“C'est pour mon papa”の唄へ――巴里の感情は最近これらのはやり唄の推移によってスイートソロから陽気な揶揄の諧調へ弾み上ったことが証拠立てられた。このとき他の国の財政の慌てふためきをよそにフランスへは億に次ぐ億の金塊がぐんぐん流れ込んでいた。
だが、やがてこの国にも不況が来た。冬を感ずるのは一番先に小鳥であるように、巴里の不景気を感じたのはまず町の唄うたいだった。
無意味なことで彼等は暮らしていると思っていることの上に一種の愛感を持ってこれまで世話して来たムッシュウ・ドュフランは彼等の急にしょげた様子を見てこれが当り前だとも思い、それ見たことかとも思わぬでもなかったが、兎に角今は自分の世話子達である。