Japanische Klassiker mit Furigana
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パリさい
巴里祭
岡本 かの子
Lesen Sie 巴里祭 (パリさい) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.324 Zeichen · 60 Bildschirme
――兎に角、明日は私とお遊びなさい。私あなたの自由に遊んで上げます。気に入った女が見つかれば一緒に歩いても上げますわ。」
夫人はこれも決定的な本心を含めた冗談で言った。
――どうぞ、まあ、よろしくおたのみします。」
新吉はつい弱気に言ってしまった。
――朝、お迎えに来るわ。」
夫人は遂々冗談を本当に仕上げて満足そうに帰りかけたが蓋をした灰殻壺の中の憐れっぽい子雀の籠った鳴声に気付くと流石に戻って、
――可哀想なことをしたのね。これあたし頂戴いて行きますわ。」
壺のまゝ雀を持って夫人は出て行った。夫人の後姿を見送って新吉はひとり小声で「うるさい婆さんだな」と云った。だが新吉は美貌な巴里女共通の幽かな寂びと品格とが今更夫人に見出され、そして新吉はまた、いつも何かの形で人を愛して居ずにいられないこの種の巴里女をしみ/″\と感じられるのだった。
眼を半眼、開いたまゝ鉛の板のように重苦しく眠り込んでいた新吉は伊太利の牧歌の声で目覚めた。朝の食事が出来たので、通い女中ロウジイヌが蓄音器をかけて行って呉れたのだ。野は一面に野気の陽炎。香ばしい乾草の匂いがユングフラウを中心に、地平線の上へ指の尖きを並べたようなアルプス連山をサフラン色に染めて行く景色を、はっきりと脳裡に感じながら、新吉はだん/\意識を取戻して行った。