Japanische Klassiker mit Furigana
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パリさい
巴里祭
岡本 かの子
Lesen Sie 巴里祭 (パリさい) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.324 Zeichen · 60 Bildschirme
入口の門番の窓には誰も居なくて祭の飾りの中にゼラニウムの花と向いあって籠の駒鳥が爽やかに水を浴びていた。
割栗石の鋪石へ一歩靴を踏み出す。すると表の壁の丁度金鎖草の枝垂れた新芽が肩に当るほどの所で門番のかみさんと女中のロウジイヌとがふざけて掴み合っていたのが新吉の姿を見ると急に止めて笑いながら朝の挨拶をした。それから隣のベッシェール夫人の家に向って、
――奥さん。うちのムッシュウがお出かけですよ。」
と声を揃えてわめいた。
ちゃんと打合せが出来ていたものと見え、すっかり着飾ったベッシェール夫人は芝居の揚幕の出かなんぞのように悠揚と壁に剔ってある庭の小門を開けて現われた。黒に黄の縞の外出服を着て、胸から腰を通して裳へ流れる線に物憎い美しさを含めている。夫人は裏にちょっと鳥の毛を覗かせたパナマ帽の頭を傾げて空の模様を見るような恰好をした。飽まで今日の着附けの自信を新吉に向って誇示しているらしかったが、やがて着物と同じ柄の絹の小日傘をぱっと開くと半身背中を見せて左の肩越しに新吉の方へ豊かな顎を振り上げた。眼は今日一日のスケジュールに就いて何の疑いをも持っていない澄んだ色をしている。