Japanische Klassiker mit Furigana
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パリさい
巴里祭
岡本 かの子
Lesen Sie 巴里祭 (パリさい) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 30.324 Zeichen · 60 Bildschirme
これほどの喧騒も混み合いも新吉がカテリイヌを追い求める心をまぎらわすことは出来なかった。午後になり時間がせまればせまるほど気があせり、まわりの形色も物音もぼっとなって夢の中を歩いているようで、広い巴里のなかの何処に居るとも知れぬカテリイヌの面影が却って現実のように眼の前にちらついた。其の面影は面長で、たゞ真白な顔――黒とも藍ともつかぬ睫のなかに煙っている二つの瞳で、じっと見入られる、――言おうようない香りの高い、けだるい感じが新吉の手足の神経の末梢まで、浸み透り、心の底にふるえている男としての恥かしさと、妙な諧調を混え、新吉はやがて恍惚とした無抵抗状態になるのだった。花弁のように軽くて、無限の重さのあったカテリイヌの体重さえも太陽に熱くなったズボンの下の膝に如実に感じられるのだった。そしてだん/\新吉は疲れて行った。
新吉は堪らなくなった。彼を無意識に疲れさすその面影から逃れるためには現実のカテリイヌが早く出て来て呉れるか、もっと違った強力な魅惑が彼の注意を根こそぎ奪うかして呉れるのでなければならなかった。新吉は早くこの二人の女に別れて、カテリイヌを探す為めに今日の巴里祭の雑沓の中を駆け廻りたいような衝動にかり立てられた。