Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ききょらい

帰去来

太宰 治

Lesen Sie 帰去来 (ききょらい) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.477 Zeichen · 31 Bildschirme

Aozora Bunko

顔の線も細く、綺麗だった。多くの肉親の中で私ひとりが、さもしい貧乏人根性の、下等な醜い男になってしまったのだと、はっきり思い知らされて、私はひそかに苦笑していた。

「便所は?」と私は聞いた。

英治さんは変な顔をした。

「なあんだ、」北さんは笑って、「ご自分の家へ来て、そんな事を聞くひとがありますか。」

私は立って、廊下へ出た。廊下の突き当りに、お客用のお便所がある事は私も知ってはいたのだが、長兄の留守に、勝手に家の中を知った振りしてのこのこ歩き廻るのは、よくない事だと思ったので、ちょっと英治さんに尋ねたのだが、英治さんは私を、きざな奴だと思ったかも知れない。私は手を洗ってからも、しばらくそこに立って窓から庭を眺めていた。一木一草も変っていない。私は家の内外を、もっともっと見て廻りたかった。ひとめ見て置きたい所がたくさんたくさんあったのだ。けれどもそれは、いかにも図々しい事のようだから、そこの小さい窓から庭を、むさぼるように眺めるだけで我慢する事にした。

「池の水蓮は、今年はまあ、三十二も咲きましたよ。」祖母の大声は、便所まで聞える。「嘘でも何でも無い、三十二咲きましたてば。