Japanische Klassiker mit Furigana
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じょうしき
常識
豊島 与志雄
Lesen Sie 常識 (じょうしき) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.237 Zeichen · 33 Bildschirme
その生長の途中で、ふいに踏みつぶされてしまった。私は「みます」のことを弁解し、互の愛を説きたてたが、もう万事過去のことになっているのがはっきり感ぜられた。それくらいのこと、お互にどうだっていいじゃないの、というのがあなたの最後の結論だった。恐らくそれがあなたの本心だったろう。
私の心の中には廃墟が出来た。そのなかにあなたの残骸がはっきり見えた。凹んだ眼と尖った鼻とのあたりに漂ってる異国人めいた風貌、断片的に無連絡的に理智めいた唇、反りのいい手指、毛皮の襟巻、特別あつらえの踵のひきしまった白足袋、または、大戸がしめきってある石の門、玄関まえの美しい砂利、日当りのいい応接室、亡夫の肖像、銀の煙草セット、置戸棚の中の大きな人形……。古人は、国亡びて山河在りと云った。私にとってはそれらのものが、あなたが亡びた後の山河であった。
富永郁子よ、これまでは普通の愛慾のいきさつである。この後に、あの思いもよらぬ問題が起ってきた。私がそれに最初にふれたのは「みます」でだった。
私一人でぼんやり酒をのんでいた時、お幾は酌をしてくれながら、もう身を固めたらどうかというような話をもちだした。