Japanische Klassiker mit Furigana
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まぼろしのたて
幻影の盾
Lesen Sie 幻影の盾 (まぼろしのたて) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.372 Zeichen · 45 Bildschirme
ウィリアムもフラーと叫んで血の如き酒を啜る。シワルドもフラーと叫んで血の如き酒を啜りながら尻目にウィリアムを見る。ウィリアムは独り立って吾室に帰りて、人の入らぬ様に内側から締りをした。
盾だ愈盾だとウィリアムは叫びながら室の中をあちらこちらと歩む。盾は依然として壁に懸っている。ゴーゴン・メジューサとも較ぶべき顔は例に由って天地人を合せて呪い、過去現世未来に渉って呪い、近寄るもの、触るるものは無論、目に入らぬ草も木も呪い悉さでは已まぬ気色である。愈この盾を使わねばならぬかとウィリアムは盾の下にとまって壁間を仰ぐ。室の戸を叩く音のする様な気合がする。耳を峙てて聞くと何の音でもない。ウィリアムは又内懐からクララの髪毛を出す。掌に乗せて眺めるかと思うと今度はそれを叮嚀に、室の隅に片寄せてある三本脚の丸いテーブルの上に置いた。ウィリアムは又内懐へ手を入れて胸の隠しの裏から何か書付の様なものを攫み出す。室の戸口まで行って横にさした鉄の棒の抜けはせぬかと振り動かして見る。締は大丈夫である。ウィリアムは丸机に倚って取り出した書付を徐ろに開く。紙か羊皮か慥かには見えぬが色合の古び具合から推すと昨今の物ではない。