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Japanische Klassiker mit Furigana

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まぼろしのたて

幻影の盾

夏目 漱石

Lesen Sie 幻影の盾 (まぼろしのたて) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.372 Zeichen · 45 Bildschirme

Aozora Bunko

「もう沢山じゃ」とウィリアムが笑いながら云う。

「ま一つじゃ。仕舞にレイモンが今まで誰も見た事のない遊びをやると云うて先ず試合の柵の中へ三十本の杭を植える。それに三十頭の名馬を繋ぐ。裸馬ではない鞍も置き鐙もつけ轡手綱の華奢さえ尽してじゃ。よいか。そしてその真中へ鎧、刀これも三十人分、甲は無論小手脛当まで添えて並べ立てた。金高にしたらマルテロの御馳走よりも、嵩が張ろう。それから周りへ薪を山の様に積んで、火を掛けての、馬も具足も皆焼いてしもうた。何とあちらのものは豪興をやるではないか」と話し終ってカラカラと心地よげに笑う。

「そう云う国へ行って見よと云うに主も余程意地張りだなあ」と又ウィリアムの胸の底へ探りの石を投げ込む。

「そんな国に黒い眼、黒い髪の男は無用じゃ」とウィリアムは自ら嘲る如くに云う。

「やはりその金色の髪の主の居る所が恋しいと見えるな」

「言うまでもない」とウィリアムはきっとなって幻影の盾を見る。中庭の隅で鉄を打つ音、鋼を鍛える響、槌の音、ヤスリの響が聞え出す。夜はいつの間にかほのぼのと明け渡る。

七日に逼る戦は一日の命を縮めて愈六日となった。