Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まぼろしのたて

幻影の盾

夏目 漱石

Lesen Sie 幻影の盾 (まぼろしのたて) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.372 Zeichen · 45 Bildschirme

Aozora Bunko

「盾の仕業だ」と口の内でつぶやく。見ると盾は馬の頭を三尺ばかり右へ隔てて表を空にむけて横わっている。

「これが恋の果か、呪いが醒めても恋は醒めぬ」とウィリアムは又額を抑えて、己れを煩悶の海に沈める。海の底に足がついて、世に疎きまで思い入るとき、何処よりか、微かなる糸を馬の尾で摩る様な響が聞える。睡るウィリアムは眼を開いてあたりを見廻す。ここは何処とも分らぬが、目の届く限りは一面の林である。林とは云え、枝を交えて高き日を遮ぎる一抱え二抱えの大木はない。木は一坪に一本位の割でその大さも径六七寸位のもののみであろう。不思議にもそれが皆同じ樹である。枝が幹の根を去る六尺位の所から上を向いて、しなやかな線を描いて生えている。その枝が聚まって、中が膨れ、上が尖がって欄干の擬宝珠か、筆の穂の水を含んだ形状をする。枝の悉くは丸い黄な葉を以て隙間なきまでに綴られているから、枝の重なる筆の穂は色の変る、面長な葡萄の珠で、穂の重なる林の態は葡萄の房の累々と連なる趣きがある。下より仰げば少しずつは空も青く見らるる。只眼を放つ遙か向の果に、樹の幹が互に近づきつ、遠かりつ黒くならぶ間に、澄み渡る秋の空が鏡の如く光るは心行く眺めである。