Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ゆうれいをみるひとをみる

幽霊を見る人を見る

長谷川 伸

Lesen Sie 幽霊を見る人を見る (ゆうれいをみるひとをみる) von 長谷川 伸 (はせがわしん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.924 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

何かブツブツいっている――いや、いっているのではない! Tが泣いているのだ。

(こいつ泣き上戸か)

が、そういう話は聞いていなかった。

「済まない――済まない」

泣き声は低かった。「済まない」という声も低かった。初めて聞いたとき、それを言葉だとは思わなかったが、繰返されたので、とうとう彼がだれかに謝罪しているのだと判った、しかし、彼の向っている方は疏水だった、その先は石を川底に敷いた鴨川だった、勿論、秋の夜の十二時という頃、川に人がいる筈もなし、もしいたら溺死した人でなくてはならないのだ。

「おいッ」

肩を叩いてやった。柳の枝の末が頬を撫ぜた。枝に露があってヒヤリとした、パラリという音もした。いい気もちではなかった、がそれよりも、彼だ。

彼は、「ひえッ」とも違う、「うおッ」とも違う、音標記号ではとても現わせられない声を出して、慌しくすッくと起ちあがって、私の顔を暫く凝視していた。

「どうしたンだい、そんな処へ坐って」

「へへへ、何――何でもありません。今夜はひどく酔ってしまって」

ひょろひょろと歩く足どりに作為がありあり見えた。

他家の軒灯の光でそれとなく見るとTの顔は蒼白だった。