Japanische Klassiker mit Furigana
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ひろばのベンチ
広場のベンチ
豊島 与志雄
Lesen Sie 広場のベンチ (ひろばのベンチ) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.998 Zeichen · 15 Bildschirme
眼を閉じて暫し佇むと、もう少女の顔は消えた。十内は思い沈んで、ぼんやり歩いていった。
河岸通りを過ぎると、横手に公園ともつかない広場があり、誰もいなかったので、十内はそこにはいり込み、篠懸の下のベンチに腰を下した。たいへん疲れた心地だった。
郷里の伯母の姿が思い出された。
彼女は農家の広い縁側に坐って、ぼろ布をいじっていた。他の者はみな田圃に出ており、十内の母も兄も墓地に埋っていた。十内が東京に出てゆくのを、伯母はやさしく引立めようとした。ここにいなさい、ここにいつまでもいなさい、もうあんなところに行きなさんな、と伯母は言った。
あんなところ、そうだ、十内は省みて、東京をあんな所と感じた。
血腥い事件や狡猾な葛藤が、毎日の新聞紙を賑わしており、それからまた、婦人警官だの警察予備隊だの、更には、世界各地から集まってくる軍備だとか戦争とかの報道。忌わしい坩堝だった。
伯母の顔は日焼けがして、都会人の皮膚の幾倍もの厚さをしていた。その額に深い皺が寄って、土地の起伏を思わせるものがあった。
その額の皺、その土地の起伏、そしてそこの農民たち、生活の困苦窮乏が表面に見えてはいるが、掘り返したら、新らしい清らかなものが見出せないであろうか。