Japanische Klassiker mit Furigana
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
Lesen Sie 影男 (かげおとこ) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 154.133 Zeichen · 310 Bildschirme
黒い影は、そのやみの中を、忍術使いのように、ちろちろと消えたり現われたりしながら、綱をめぐらした裏庭へはいっていった。
裏庭には樹木にかこまれた十坪ほどのあき地があった。この辺は座敷から見えないので、手入れが行き届かないのか、一面に雑草がはえていた。
影男は一本の太い木の幹にかくれて、その雑草のあき地をじっと見つめた。常夜灯の光はほとんど届かないが、目が慣れるにしたがって、曇り空にもほのあかりがあるので、地面が見わけられるようになってきた。
そこにはえているのは、二、三寸の短い雑草ばかりだったが、その平らなあき地に、二つの丸い大きな石ころがころがっていた。よく見ていると、その石ころが、生きもののように、かすかに動いていることがわかった。
影男は木の陰にしゃがんで、二つの石ころに目を凝らした。石ころには目と鼻と口とがあった。一つは男の顔、一つは女の顔をしていた。男のほうは、もじゃもじゃに乱れた髪の下に、濃いまゆと、大きな目と、彫刻のような鼻と、くいしばった口があった。女のほうは、カールの髪が乱れて、顔にかかっていた。ゾッとするほど美しい顔だった。やみの中にも、彼女の顔だけが白く浮き出しているように見えた。