Japanische Klassiker mit Furigana
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びしょう
微笑
横光 利一
Lesen Sie 微笑 (びしょう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.911 Zeichen · 50 Bildschirme
アメリカなら、この月末にだって上陸は出来ますね。」
もう冗談事ではなかった。どこからどこまで充実した話か依然疑問は残りながらも、一言ごとに栖方の云い方は、空虚なものを充填しつつ淡淡とすすんでいる。梶は自分が驚いているのかどうか、も早やそれも分らなかった。しかし、どうしてこんな場合に、不意に悪人のことを自分は考えたのだろうか。たしかに、事は戦争の勝ち敗けのことだけでは済みそうにないと梶は思った。勿論、彼は自分が国を愛していることは疑わなかった。負けることを望むなどとは考えることさえ出来ないことだった。勝ってもらいたかった。しかし、勝っている間は、こんなに勝ちつづけて良いものだろうかという愁いがあった。それが敗け色がつづいて襲って来てみると、愁いどころの騒ぎでは納まらなかった。戦争というものの善悪如何にかかわらず祖国の滅亡することは耐えられることではなかった。そこへ出現して来た栖方の新武器は、聞いただけでも胸の躍ることである。それに何故また自分はその武器を手にした悪人のことなど考えるのだろうか。ひやりと一抹の不安を覚えるのはどうしたことだろうか。――梶は自分の心中に起って来たこの二つの真実のどちらに自分の本心があるものか、暫くじっと自分を見るのだった。