Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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びしょう

微笑

横光 利一

Lesen Sie 微笑 (びしょう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.911 Zeichen · 50 Bildschirme

Aozora Bunko

また二人は黙って暫く歩いた。

「僕はもう、誰かにすがりつきたくって、仕様がない。誰もないのです。」

今まで無邪気に天空で戯れていた少年が人のいない周囲を見廻し、ふと下を覗いたときの、泣きだしそうな孤独な恐怖が洩れていた。

「そうだろうな。」

答えようのない自分がうすら悲しく、梶は、街路樹の幹の皮の厚さを見過してただ歩くばかりだった。彼は早く灯火の見える辻へ出たかった。丁度、そうして夕暮れ鉄材を積んだ一隊の兵士と出会った場所まで来たとき、溌剌としていた昼間の栖方を思い出し、やっと梶は云った。

「しかし、君、そういうところから人間の生活は始まるのだから、あなたもそろそろ始まって来たのですよ。何んでもないのだ、それは。」

「そうでしょうか。」

「誰にもすがれないところへ君は出たのさ。零を見たんですよ。この通りは狸穴といって、狸ばかり棲んでいたらしいんだが、それがいつの間にか、人間も棲むようになって、この通りですからね。僕らの一生もいろんなところを通らねばならんですよ。これだけはどう仕様もない。まァ、いつも人は、始まり始まりといって、太鼓でも叩いて行くのだな。死ぬときだって、僕らはそう為ようじゃないですか。