Japanische Klassiker mit Furigana
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びしょう
微笑
豊島 与志雄
Lesen Sie 微笑 (びしょう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.995 Zeichen · 43 Bildschirme
彼は四五歩先の方へ立ち止って、線路の上を遠く見渡すような様子をした。
私達は一寸黙っていた。真黒な空から落ちてくる雪片が、向うの石垣を背景にして白く浮いて見えた。それをじっと見ていると、自分の身体も雪と共に地面に舞い落ちてゆくような気がした。すぐ前は低い線路で、その青白い色に光っているレールが、凡てのものを或るカタストロフへ引き寄せようとしているらしかった。私はふと不気味な恐怖に襲われて、側の女を顧みた。すると彼女も私の方を顧みて、眼で微笑んだ。頬の肉の豊かな、口の大きい眼に表情のある女だった。真白に白粉をつけていたので、電灯の薄ら明りと雪の反射との妙に陰影の無い明るみのうちに、その顔がぽかりと浮出して見えた。
「何処までおいでです。」と私はまた云った。
「あの清水町まで行くのでございますが。」
私は自分が本当に芝居をしているのか、夢を見ているのか、分らないような気持ちになった。夜更けの小駅と雪と女と怪しい男と、それが一つに融け合って夢のような幻を作った。私は黙っていた。
「清水町へ行きますにはやはり公園をぬけて行ったが宜しゅうございましょうか。」と此度は女の方から云った。