Japanische Klassiker mit Furigana
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「しんりしけん」じょ
心理試験
小酒井 不木
Lesen Sie 心理試験 (「しんりしけん」じょ) von 小酒井 不木 (こざかいふぼく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 96.338 Zeichen · 197 Bildschirme
幸いにその頃、義夫は小学校へ通うようになりましたので、妻と離れている時間が出来、義夫にとってはむしろ好都合でありました。
学校は私の家から五町ほど隔ったところにありますが、途中に十丈ほどの険阻な断崖がありますから、入学して一ヶ月ほどは女中のお清に送り迎えさせましたが、後には義夫一人で往復するようになりました。私が夕方、往診から帰ると、馬蹄の音をきいて、義夫は嬉しそうに門まで出迎えてくれます。その無邪気な顔を見るにつけても、妻の無情を思い比べて悲しい気持にならずにはおられませんでした。
ある日のことです。それは梅雨時の、陰鬱な曇り日でありました。「どんよりと曇れる空を見て居しに人を殺したくなりにけるかな」と啄木の歌ったような、いやに重くるしい気分を誘う日でして、山々に垂れかかった厚い黒雲が、悪魔の吐き出した毒気かと思はれ、一種の不気味さが空気一ぱいに漂っておりました。その日も私は、かなり遠くまで往診して午後五時頃非常に疲れて帰って来ると、いつも門まで迎えに出る義夫の姿が見えませんので、どうしたのかと不審に思いながらも、下男が昨日から、母親の病気見舞のために実家へ行って留守だったので、自分で馬を廐につなぎ、それから家の中にはいると妻は走り出て来て、ぷんぷん怒って言いました。