Japanische Klassiker mit Furigana
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いかりのむし
怒りの虫
豊島 与志雄
Lesen Sie 怒りの虫 (いかりのむし) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.457 Zeichen · 24 Bildschirme
欝ぎの虫、癪の種、さまざまなものが、人間のなかに住んで、正常な感情を引っ掻きまわすと言われているが、ここに、木山宇平のなかには怒りの虫がいつしか巣くったと、周囲の人々から見られるようになった。彼は元来、至って温厚な性質だったのだが、近頃、なにかにつけて腹立ちっぽくなったのである。
外出に際して、玄関で靴をはいた後、ちょっとポケットにさわってみ、小首をかしげ、大きな声で怒鳴った。
「ふきん、ふきん。」
八重子夫人と女中が、見送りに出ていたが、何のことかよく分らなかった。
「ふきんだ。」と木山はまた言った。
もっとも、彼は食卓で、必ず布巾を用意させておく習慣だった。茶とか汁物とか、一滴でも卓上にたれると、すぐに布巾で拭いた。然し玄関での布巾は異例だ。それでも女中は駆けだして、布巾を一つ持って来た。木山はそれを受取ろうとしたが、手を引っこめて、怒鳴った。
「ばか。布巾をどうするんだ。ハンケチだ。」
「あら、」八重子夫人が答えた。「ハンケチは出しておきましたが……。」
いつも、洋服に添えてハンケチは出してあったのである。
木山は苛ら苛らしていた。
「よろしい。途中で買う。