Japanische Klassiker mit Furigana
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あやしきたびそう
怪しき旅僧
田中 貢太郎
Lesen Sie 怪しき旅僧 (あやしきたびそう) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.374 Zeichen · 5 Bildschirme
――此の話は武蔵の川越領の中の三ノ町と云う処に起った話になっているが、此の粉本は支那の怪談であることはうけあいである。
それは風の寒い夜のことであった。三ノ町の某農家の門口へ、一人の旅僧が来て雨戸を叩いて宿を乞うた。ところで農家ではもう寝ようとしているうえに、主翁は冷酷な男であったから初めは寝たふりをして返事をしなかったが、何時までたっても旅僧が去らないので、「もう寝たから、他へ往って頼むが好い」と、叱るように云った。
「そうでございましょうが、日が暮れて路がわからないうえに、足を痛めて、もう一足も歩けません、どうかお慈悲に庭の隅へなりと泊めてくださいまし」と、旅僧は疲れ切ったような声で云った。
主翁は返事をしなかった。
「他へ往くと申しましても、暗くて路も判りませんし、足が痛くて一足も歩けませんから、どうぞお慈悲をねがいます……」と、旅僧は動かなかった。
主翁はしかたなく慍り慍り起きて来た。
「……寝ておるからほかへ往けと云うに、強情な人じゃ」と、入口の戸を開けて暗い中から頭をだして、「其のかわり、被るものも喫うものも何もないよ」
「いや、もう、寝さしていただけばけっこうでございます」