Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あやしのもの

怪しの者

国枝 史郎

Lesen Sie 怪しの者 (あやしのもの) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.259 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

貴殿のお役目遂げられたも同然、お喜びなされ、ご安心なされ!」

「火事?……大船が?……燃えている?」

「拙者が放火いたしたからでござる」

「貴殿が……お身内の貴殿が?」

「われらが主君成瀬隼人正、西丸様お企てを一大事と観じ、再三ご諫言申し上げたれど聞かれず、やむを得ず拙者に旨を含め……」

この時船大工たちがお小夜様を連れて、林の奥から出て来ました。

「お柳、お小夜様を、鶴吉殿へ!」

わたしの相棒のお柳は、お小夜様の手を取って、鶴吉の側へ連れて行きました。お小夜様は恐怖と悲哀とで、生きた空もないようでございましたが、でもベッタリと地へすわると、鶴吉の項を膝の上へのせ、しゃくり上げて泣きました。鶴吉を愛していたのですねえ。

宗家相続の問題以来、将軍吉宗様と尾張家とは、面白くない関係となりまして、宗春様が年若の御身で、早くご隠居なされましたのも、そのためからでございますし、ご禁制の大船を造られましたのも、吉宗様に対する欝忿晴らし、そのためだったように思われます。そのご禁制の大船ですが、もうあの時には九分がたできていて、立派なものでございました。ご主君から渡された竹筒仕込みの地雷で、わたしが焼き払いさえしなかったなら、完成したに相違ございません。