Japanische Klassiker mit Furigana
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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
Lesen Sie 怪しの館 短編 (あやしのやかた) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 81.915 Zeichen · 165 Bildschirme
所々剥げた蝋鞘の大小を見栄もなくグッタリと落とし差しにして、長く曳いた裾で踵を隠し泳ぐようにスースーと歩いて来る。
ほとんどどこにも生気がない。老武士その人にないばかりでなくその老武士がはいって来ると共に総る物が生気を失い陰々たる鬼気に襲われるのであった。店に飾ってある弓や矢や点されてある行燈までぼっと光を失ってしまう。
老武士は顔を埋ずめたまま店先までスーと寄って来たが余韻のない嗄れた低い声で、
「弓弦を一筋……」と咽ぶように云った。
「へーい」
と忠蔵は応じたが何がなしに総身ゾッとして、木箱を探る手が顫えたのである。それでも弓弦を差し出すと、また同じ声同じ調子で、
「小中黒の征矢三筋……」
「…………」今度は忠蔵は言葉もなく云われた矢を取って差し出した。と老武士は小手を振ったがこれは鳥目を投げたので、投げたその手で二品を掴むとクルリと老武士は方向を変え、そのスースーと泳ぐような足で開いたままの潜戸から煙りのように闇夜の戸外へ消えて行った。
その翌日のことである――
「ほんとかな? それは? その噂は? ふうむ、不思議な老人じゃの……」
誂えた弓をわざわざ見に来た旗本の次男恩地主馬は声をはずませてこう訊いた。