Japanische Klassiker mit Furigana
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おそろしきさくご
恐ろしき錯誤
江戸川 乱歩
Lesen Sie 恐ろしき錯誤 (おそろしきさくご) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.075 Zeichen · 46 Bildschirme
彼奴は今日から、一日の休む暇もなく一生涯、長い長い一生涯、あの取返しのつかぬ苦しみを苦しみ抜くんだ。あのどうにもしようのない悶えを悶え通すのだ。
俺の気のせいだって? 馬鹿なっ! 確かに、確かに、俺は太鼓の様な判だって捺してやる。彼奴は俺の話を聴いている内に、とうとううっぷして了ったじゃないか。真青な顔をして、うっぷして了ったじゃないか。これが勝利でなくて何だ。
「勝った、勝った、勝った」
という、単調な、没思考力の渦巻の間々に、丁度活動写真の字幕の様にこんな断想がパッパッと浮んで来たりした。
夏の空は底翳の眼の様にドンヨリと曇っていた。そよとの風もなく、家々の暖簾や日除けは、彫刻の様にじっとしていた。往来の人達は、何かえたいの知れぬ不幸を予感しているとでもいった風に、抜足差足で歩いているかと見えた。音というものが無かった。死んだ様な静寂が、其辺一帯を覆っていた。
北川氏は、その中を、独りストレンジアの様に、狂気の歩行を続けていた。
行っても行っても果しのない、鈍色に光った道路が、北川氏の行手に続いていた。
あてもなく彷徨う人にとって、東京市は永久に行止りのない迷路であった。