Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おそろしきさくご

恐ろしき錯誤

江戸川 乱歩

Lesen Sie 恐ろしき錯誤 (おそろしきさくご) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.075 Zeichen · 46 Bildschirme

Aozora Bunko

お前はこういう罪を犯したではないかと責めたところで、対手がそれに服しなければ、どうにもしようがないのだ。僕は唯その男の機智に感じ入って、じっとしている外はなかった。対手は分っている。而かもそれを責める方法がない。こんな苦しい、変てこな立場があるだろうか。だが、野本君、安心して呉れ給え。僕はとうとうその男をとっちめる武器を発見したんだ。けれど、それは僕にとって何という残酷な武器だったろう。

僕が発見した事実というのは、その男を苦しめると同時に僕を苦しめる。それを復讐の手段に用いる為には、先ず僕自身が対手と同様の苦しみを嘗めた上でなければ、役に立たない様な種類のものだった。僕は、あの、讐に毒饅頭を食わせる為に、先ず自から命を的にその一片を毒見した昔の忠臣の話を思出した。敵を斃せば自分も滅びる、自分が先ず死なねば対手を殺すことが出来ない。何という恐ろしい死にもの狂いな復讐だろう。

だが、昔の忠臣の場合はまだいい。彼は復讐を思い止まりさえすれば、身を殺す必要はなかったのだ。ところが、僕の場合は、復讐をしようがしまいが、そんなことに関係なく、その恐ろしい事実は、一刻一刻鮮明の度を加えて僕に迫って来るのだった。