Japanische Klassiker mit Furigana
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おそろしきさくご
恐ろしき錯誤
江戸川 乱歩
Lesen Sie 恐ろしき錯誤 (おそろしきさくご) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.075 Zeichen · 46 Bildschirme
併し、両氏共、メダルを取出すまでもなく、その無実が明瞭になった。
彼等は申合せた様に、北川氏の変てこな話を聴くと、気の毒だという表情をした。そして、
「君は細君に死なれて、少しとりのぼせているに相違ない。そんな馬鹿馬鹿しいことがあってたまるものか、君はもっと気を落着けなくちゃいけない。まあまあそんなつまらない話は止しにして、さあ一杯やり給え」
という様な調子で、他意もなく慰めてくれるのだった。彼等の表情には、犯罪者の疑懼などは影さえも差さなかった。
北川氏は少なからず失望した。
「俺の考は、そんなに狂気じみているのかしら、若しかすると、これは彼等が云う様に、まるで根も葉もない妄想に過ぎないのではあるまいか。
だが、まだ野本が残っている。俺は最初から彼奴をこそ目ざしていたのではないか。兎も角も最後までやって見なければ」
こうして、彼は今日野本氏を訪れたのだった。そして、予期以上の見事な効果を収めたのだった。彼が狂者の様に歓喜したのは決して無理ではなかった。
北川氏は二時間余りも、汗でベトベトになって歩き続けていた。ふと、時計を見ると、夏の日はまだ暮れるに間があったけれど、時間はもう夕食時を過ぎていた。