Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうふのくちぶえ
恐怖の口笛
海野 十三
Lesen Sie 恐怖の口笛 (きょうふのくちぶえ) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 60.713 Zeichen · 122 Bildschirme
と云ったが、大江山課長は十分痛いところをつかれたといった面持だった。痣蟹仙斎の、あの顔半分を蔽う蟹のような形の痣が目の前に浮んでくるようだった。
「それでは課長さん。これは新聞には書きませんが、痣蟹の在所は目星がついているのですね」
「もう五分間は過ぎた」と課長はスックと椅子から立ちあがった。「今日はここまでに……」
課長が室を出てゆくと、記者連は大声をあげて露骨な意見の交換をはじめた。結局こんどの吸血事件と帰国した痣蟹仙斎のこととを結びつけて、本庁は空前の緊張を示しているが、実は痣蟹の手懸りなどが十分でなくて弱っているものらしいということになった。そしてこのことを今夜の夕刊にデカデカ書き立てることを申合せたのだった。
夕刊の鈴の音が喧しく街頭に響くころ、大江山課長はにがりきっていた。
「しようがないなア。こう書きたてては、痣蟹のやつ、いよいよ警戒して、地下に潜っちまうだろう」
そこへ一人の刑事が入ってきた。
「課長さん。お手紙ですが……」
と茶色のハトロン紙で作った安っぽい封筒をさしだした。
課長は何気なくその封筒を開いて用箋をひろげたが、そこに書いてある簡単な文句を一読すると、異常な昂奮を見せて、たちまちサッと赭くなったかと思うと、直ぐ逆に蒼くなった。