Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うらみなきさつじん

恨なき殺人

宮島 資夫

Lesen Sie 恨なき殺人 (うらみなきさつじん) von 宮島 資夫 (みやじますけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.611 Zeichen · 56 Bildschirme

Aozora Bunko

仕方がないので松田は、ウンと抉って抜くと、大きな男は黙ってパッタリ倒れてしまった。

松田は急に恐ろしくなって、滅茶苦茶に逃げ出した。その時彼の眼には、三田も、薄髯の男も、何もうつらなかった。暗い道をただ一心に馳け出したのであった。殊に彼は、この山に来たばかりなので、その辺の地理はまるで知らなかった。一時間位も馳け通したと思うと、彼はまた元の弁天堂の後ろに来た。

暗の森の中に、カンテラが一つぶら下って、人声がガヤガヤしていた。彼は顔馴染のないのを幸いに、側まで行って見た。

其処にはさっきの男が、血にまみれてもう冷たくなって横わっているのを、赤ずんだカンテラの焔が気味悪く照らしていた。周りを取り巻いた二三人の人は、夜明けまで番をしているのだと言っていた。

彼はその時、自分が此の男を殺したのだとは思えなかった。唯だ薄茫然として、暗い道を探しながら飯場に帰ったのは三時頃であったと言った。

「どうして直ぐ逃げなかったんだ」と池田が訊いた。

「鈴木の伯父御に迷惑をかけちゃ済まないと思ったし、三田の兄貴のことも気になって、逃げる気にもならなかったんでした」と、松田は覚悟したように言った。