Japanische Klassiker mit Furigana
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きょうぞうのちち
恭三の父
加能 作次郎
Lesen Sie 恭三の父 (きょうぞうのちち) von 加能 作次郎 (かのうさくじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.742 Zeichen · 20 Bildschirme
生温い灰の香が鼻についた。蚊が二三羽耳の傍で呻った。恭三は焦立った気持になった。呼吸がせわしくなって胸がつかえる様であった。腋の下に汗が出た。
先ず端書を読んだ。京都へ行って居る八重という本家の娘からの暑中見舞であった。手紙の方は村から一里余離れた富来町の清左衛門という呉服屋の次男で、つい先頃七尾の或る呉服屋へ養子に行った男から来たのであった。彼は養子に行く前には毎日此村へ呉服物の行商に来た男で、弟様といえば大抵誰にも通ずる程此村に出入して居た。恭三の家とは非常に懇意にして居たので、此処を宿にして毎日荷物を預けて置いて、朝来てはそれを担って売り歩いた。今度七尾へ養子に行ったのについて長々厄介になったという礼状を寄越したのであった。
恭三は両方共読み終えたが、不図した心のはずみで妙に間拍子が悪くなって、何でもない事であるのに、優しく説明して聞かせることが出来にくいような気持になった。で何か言われたら返事をする積りで煙草に火をつけた。
蚊が頻りに攻めて来た。恭三は大袈裟に、
「非道い蚊だな!」と言って足を叩いた。
「蚊が居って呉れねば、本当に極楽やれど。