Japanische Klassiker mit Furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme
「俺はこいつをステージに出したくない」
「坐ってるだけ?」信二は兄を無視していった。兄の強い語調が反撥を誘っていた。彼は、兄に属しているのではなかった。
「そうさ、だいじょぶそれでごまかせるさ」
「止めとけ、面白いと思っているのか」と兄がいった。
「かまわない、なんだってやる」
信二は兄を見ずにいった。安達は手をたたいた。
「よし、これで決まった。ペイを五十円ふやしてやる」安達は大げさにうなずき、唇を笑う形にした。そのまま細い目で信二をみつめていた。兄はだまっていた。
「いそげや」と安達がいった。
安達の服は大きかった。ステージの幕のこちら側に、メンバアはすでに位置について、兄がトランペットの口をしめしている。
マスターの、ピアノの荻村が、もう一度信二に注意をした。「ね、ベースに合わせてりゃいい、ね?」
荻村はピアノに戻った。臙脂の厚い幕の向うのざわめきが遠くなって、照明が幕にまるく当った。一心に彼は荻村をみつめていた。荻村はピアノに向ったまま、右の靴尖で床をたたく。コツ、コツ、コツコツ、コツコツ。兄がトランペットをもつ肩に力をこめ、テーマの第一小節を吹きはじめた。