Japanische Klassiker mit Furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme
分厚いゴムのような唇をゆがめ、少尉がにやりとした。「じょうだんだよ」と、彼はいった。
「出て行け」英語でいい、信二は出口を指した。厚い肩をゆすり上げて、少尉は出て行った。少尉は、まだ喘いでいた。
娘はすすり泣くのをやめなかった。ずりあがったトッパアを直してやり、力を貸して立たせた。「だいじょぶ? どこもなんともない?」娘はむせびながらこっくりする。「……帰ろう」と、彼はいった。
娘は小刻みにふるえていた。支えるようにして便所の表に出た。「ボーイ」暗闇のなかで、声がひびいた。信二は娘の慄えがはげしく、大きなものになるのをかんじた。「行こう」と彼はいった。
「ボーイ」声はまた呼んだ。「話がある。今のことは、おれが悪かった」声はしつこかった。「来い、ちょっとこい」
「一人で帰れる?」と信二はきいた。「いや、いや」娘は震える目で見上げた。「じゃここで待ってな」
信二は便所の裏にまわって行った。漁火のような煙草の火が光をまし、少尉の顔がうかび上った。煙草の火が闇にながれた。その瞬間、猛烈なパンチが信二の頤にとんだ。信二は仰向けに砂の上に倒れた。
左の頤から唇にかけて、熱いものを貼りつけられたような鈍重な、そして痛烈な痛みだった。