Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Lesen Sie 愛のごとく (あいのごとく) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 103.908 Zeichen · 210 Bildschirme
板戸を明け、入ってきた女は蒼ざめ、完全なヒステリイの顔をしていた。頬の骨が目立ちもともと目尻の切れ上った目がよけい釣りあがって、色を失くした大きな脣が、ひきつけた子供のようにぴくぴくと慄えている。
私はびっくりし、おびえた。泣かれるのは困る、苦手だと思った。が、女は音を立てて板戸を締め、鍵を刺すと、そのまま板戸に向いて坐った。肩で吊った芥子色のワンピースだったが、でもその肩は泣いているようには見えない。持物も白革のハンド・バッグ一つで、どうやら、家出してきたのでもなかった。
「どうしたんだ?」と、私は蒲団に戻りながらいった。「あいつ、怒ったのか?」
「……いいのよ。私、弱みを握っているんだもの」
女は板戸に向いたまま答えた。強い語調だった。
「へえ。平気だったの? 泊っても」
「平気よ。なにもいわなかったわ。だからいいのよ」
女は向き直り、こわばった頬で無理な笑顔をつくった。
「あの人はね、ただの同居人なの。だから私はしたいことをするの。していいのよ。向うに弱みがあるんだから」
私は、女に別人の顔を見ていた。蒼白い女の顔はきびしく、はじめて私は気づいた。女は、私にはそれまでは一度も自己を主張する顔を見せたことがなかったのだ。