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Japanische Klassiker mit Furigana

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あいよあい

愛よ、愛

岡本 かの子

Lesen Sie 愛よ、愛 (あいよあい) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.138 Zeichen · 99 Bildschirme

Aozora Bunko

」母は話さなかったが、恐らく母が娘時代に罹った気鬱症には、これ等が利いたのであろう。

色、聞、香、味、触の五感覚の中で、母は意識しないが、特に嗅覚を中心に味覚と触覚に彼女の気鬱症は喘きを持ったらしいことが、私に勧める食餌の種類で判った。私もそれを好まぬことはなかった。しかし、一度にもっと渾然として而も純粋で爽かな充足を欲した。「もっと、とっぷりと浸かるような飲ものはない?」「しとしとと、こう手で触れるような音曲が聴き度いなあ。」母は遂々、匙を投げた。

「男持ちの蝙蝠傘を出して下さい。」「草履を出して下さい。」「河を渡って桃を見に行くから。」私は必ずしも、男性に餓えているというわけではなかった。渡しを渡った向岸の茶店の傍にはこの頃毎日のように街の中心から私を尋ねて来る途中、画架を立てて少時、河岸の写生をしている画学生がいる。この美少年は不良を衒っているが根が都会っ子のお人好しだった。

私は彼を後に夫にするほどだから、かなり好いてはいた。けれども、自分のその当時の欲求に照して、彼は一部分の対象でしかないのが、彼に対して憐れに気の毒であった。

茶店の床几で鼠色羽二重の襦袢の襟をした粗い久留米絣の美少年の姿が、ちらりと動く。