Japanische Klassiker mit Furigana
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あいよあい
愛よ、愛
岡本 かの子
Lesen Sie 愛よ、愛 (あいよあい) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 46.138 Zeichen · 99 Bildschirme
だが、かの女はそれがまた寂しいのだ。自分の意地や好みを立てて、その上、寂しがるのは贅沢と知りつつ時々涙が出るのだった。
まだその日の疲れの染まない朝の鳥が、二つ三つ眼界を横切った。翼をきりりと立てた新鮮な飛鳥の姿に、今までのかの女の思念は断たれた。かの女は飛び去る鳥に眼を移した。鳥はまたたく間に、かの女の視線を蹴って近くの小森に隠れて行った。残されたかの女の視線は、墓地に隣接するS病院の焼跡に落ちた。十年も前の焼跡だ。焼木杭や焼灰等は塵程も残っていない。赤土の乾きが眼にも止まらぬ無数の小さな球となって放心したような広い地盤上の層をなしている。一隅に夏草の葉が光って逞ましく生えている。その叢を根にして洞窟の残片のように遺っている焼け落ちた建物の一角がある。それは空中を鍵形に区切り、刃型に刺し、その区切りの中間から見透す空の色を一種の魔性に見せながら、その性全体に於ては茫漠とした虚無を示して十年の変遷のうちに根気よく立っている。かの女は伊太利の旅で見た羅馬の丘上のネロ皇帝宮殿の廃墟を思い出した。恐らく日本の廃園に斯うまで彼処に似た処は他には無かろう。