Japanische Klassiker mit Furigana
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あいけいでん
愛卿伝
田中 貢太郎
Lesen Sie 愛卿伝 (あいけいでん) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.745 Zeichen · 14 Bildschirme
趙は愛卿の死骸を見たかった。
墓が発かれて、綉褥に包まれた愛卿の死骸が露われた。趙は我を忘れてそれを開けてみた。
ただちょっと睡っているようにしか見えない生々した死骸であった。趙はその死骸へ手をやって泣いたがそのまま気が遠くなってしまった。
趙は老人の介抱によってやっと我に還った。彼はそこで愛卿の死骸を家の中へ運んで、香湯で洗い、その姿にふさわしい華美な服を被せて、棺に納め、それを母親の墓側へ持って往って葬った。
改葬が終ったところで、趙は墓へ向って言った。
「お前は聡明な女であった、凡人ではなかった、わしの心が判っているなら、もとの姿を一度見せておくれ」
趙は家へ帰っても銀杏の下へ往って、これと同じようなことを言ったが、これはその日ばかりでなしに、翌日もその翌日も、毎日のように白苧村の墓と銀杏の下へ往ってそれを言った。
十日近くにもなった頃であった。その晩は家のまわりに暗い闇が垂れさがって、四辺がひっそりしていた。趙は一人中堂にいたが、退屈でしようがないので、いっそ寝ようかと思ったが、どうも寝就かれそうもないので、そのまましかたなしにじっとしていた。