Japanische Klassiker mit Furigana
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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
Lesen Sie 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 116.728 Zeichen · 231 Bildschirme
また夏が来て或る日立原が軽井沢の私の家に、午前にやって来た。いつもとは違う気合が見え、そわそわとして私の言葉がよく彼の耳におちついて聞えぬらしかった。そうして今日は戸隠にいる津村信夫を訪ねかたわら、戸隠にしばらく滞在するつもりだといった。戸隠に行くのに、何も軽井沢まで態々来なくともよいのに、変だと私は彼の顔をみると、立原はうわのそらにある眼付に狼狽の色をあらわし、突然、庭に出て行って表の道路の方を見たりした。その時分、立原に東京の人で第二の愛人ができているということを聞いていたので、私は彼をおちつかせるために言った。
「誰かと一緒に来たんじゃないか。」
「浅路さんが東京から来ているんです。」
「それで、」
「前の土手に待って貰っているんです。」
「この暑いのに表に待たせるなんて、早く呼びたまえ。」
一緒に前の道路に出てみると、小柄な事務員風な女の人が、雑草が畝を作っている小高い処に腰を下ろして、顔だけ私の家の方に向けていた。そして私の顔をみると、丁寧に挨拶をした。だいぶ距離があったが、赧らめた顔色がわかる程の羞らいだった。立原は例の長いからだをそこまで運ぶと、女の人に何かくしゃくしゃと言い、女の人はすぐにうなずいて素直に立原の後について来た。